AI時代のエンジニアに必要なスキルは何か。
生成AIが開発の中に入り、エンジニアが身につけたい能力の候補は増えています。
AIへの指示、AIが出したものの見極め、新しい技術の学習、そしてコードを書く力。
これらは別々のスキルとして身につけていけばよいのでしょうか。それとも、実際の開発では互いに組み合わさって使われるのでしょうか。
スーパーソフトウエアでは、現在ITエンジニアとして働く27〜59歳の男女1,265人を対象に、生成AIの普及を踏まえたキャリアへの意識と、今後重要性が高まると考える能力について調査しました。
特に注目したいのが、AIを日常的に使うエンジニアの回答です。
AIへの指示や最新技術だけでなく、「コードを書く力」もAI未利用者より高い割合で選ばれていました。
この結果を起点に、AI時代にエンジニアのスキルや能力をどう広げていくのかを考えます。
1,265人調査で見えた、AI時代のスキル・能力への意識
「生成AIの普及を踏まえ、コードを書く力以外の能力を身につけなければ、今後のキャリアが不安だと感じますか」と聞いたところ、「強く感じる」が19.1%、「ある程度感じる」が40.5%。
合わせて59.6%が、コードを書く力以外の能力についてキャリア上の不安を感じていると回答しました。

図1:コードを書く力以外の能力がなければキャリアが不安か(n=1,265、単一回答)
AIの利用頻度別に見ると、回答割合にはさらに大きな違いがありました。
- ほぼ毎日利用:85.6%
- 週に数回利用:71.8%
- 月に数回利用:36.5%
- 試したことはあるが現在はほぼ利用していない:31.5%
- 利用経験なし:14.9%
ほぼ毎日利用する人と利用経験がない人では、70.7ポイントの差があります。

図2:AI利用頻度別「コードを書く力以外の能力を身につけなければキャリアが不安」と回答した割合(n=1,265、単一回答)
また、「AI時代に今後重要性が高まる能力」を最大3つまで選んでもらったところ、全体では次の項目が上位となりました。
- AIに適切な指示を出す力:34.8%
- AI出力を見極める力:29.2%
- 最新技術を学ぶ力:24.1%
- 何を作るべきか整理する力:17.8%
- コードを書く力:15.0%
AIを使う力だけが挙がっているわけではありません。
AIに何をさせるかを考えること、その結果を見極めること、新しい技術を学ぶこと、コードを書くことまで、複数の能力が回答されています。
なお、この設問は「現在重要な能力」を順位づけしたものではありません。
「今後重要性が高まると思う能力」を最大3つまで選ぶ設問です。そのため、選択率の高低だけから、現在の仕事における能力の重要度を判断することはできません。
また、今回の調査はAI利用頻度と回答の関連を示すものであり、AIを使うことによって意識が変化したという因果関係を示すものではありません。
AIをほぼ毎日使う人は、「コードを書く力」も高い割合で選んでいた
今回の結果の中で、特に注目したいのが「コードを書く力」です。
「コードを書く力」を今後重要性が高まる能力として選んだ割合は、
- ほぼ毎日利用:24.3%
- 週に数回利用:13.3%
- 月に数回利用:9.0%
- 現在はほぼ利用していない:8.5%
- 利用経験なし:9.1%
でした。
AIをほぼ毎日使っている人では、AI利用経験がない人より15.2ポイント高い結果です。
同じほぼ毎日利用する人では、「AIに適切な指示を出す力」が40.6%、「最新技術を学ぶ力」が32.5%でした。
つまり、AIを高頻度で利用している層では、AIへの指示や新しい技術だけに回答が集中しているわけではなく、コードを書く力も同時に選ばれています。

図3:AI利用頻度別に見る主要能力の選択率(n=1,265、複数回答、最大3つまで)
この結果から、AI利用によってコードを書く力が高まる、あるいはAI利用者だからコードを重視するようになる、と因果関係まで結論づけることはできません。
一方で、「コードを書く力からAIを使う力へ、そのまま置き換わっていく」という見方だけでは捉えにくい結果ではあります。
スーパーソフトウエアでは、この点にAI時代のエンジニアの能力を考えるヒントがあると考えています。
技術力を土台に持ちながら、その技術をAIへの指示、出力の判断、システム理解、開発の進め方へと使う範囲が広がっていく。
私たちは、そうした力を「開発推進力」として整理しています。
AI時代のスキルを「開発推進力」の5つの能力で考える
スーパーソフトウエアでは、開発推進力を次のように定義しています。
技術を基盤に、顧客とシステムを理解し、人とAIを組み合わせながら、開発を前に進める力。
この力を構成するのは、
- 作る力
- 理解する力
- 判断する力
- 進める力
- 共有する力
の5つです。
今回の調査は、この5つの能力を測定するために設計したものではありません。
ただし、調査項目を実際の開発でどう使うか考えると、5つの能力との接点が見えてきます。
| 調査で挙がった能力 | 5つの能力との主な接点 | 実際の仕事では |
|---|---|---|
| コードを書く力 | 作る力 | 技術を理解し、設計・実装し、AIが生成したコードも含めてシステムとして成立させる |
| AIに適切な指示を出す力 | 理解する力 | 目的、業務、システム、制約を理解した上で、AIに何を考えさせるかを決める |
| AI出力を見極める力 | 判断する力 | AIが出した案を技術・品質・要件などから評価し、採用するか判断する |
| 何を作るべきか整理する力 | 理解する力・判断する力 | 要求や課題を整理し、システムとして何を実現するかを具体化する |
| 最新技術を学ぶ力 | 5能力を更新するための学習 | 新しい技術やAIを取り込み、作り方・判断方法・進め方を更新していく |
特に、「AIに適切な指示を出す力」は、プロンプトの書き方だけで決まるものではありません。
例えば顧客から「この処理を効率化したい」という相談を受けたとします。
顧客が何を実現したいのか。
現在の業務はどうなっているのか。
既存システムにはどんな制約があるのか。
何を変えてよく、何を維持する必要があるのか。
こうした背景を理解して初めて、AIに何を考えさせ、どの条件を与えるべきかを決められます。
つまりAIへの指示は、AIだけの独立した能力として使われるのではなく、「理解する力」をAIによって発揮する一つの場面でもあります。
「AI出力を見極める力」も同様です。
生成されたコードや設計案について、仕様に合っているか、既存システムと整合するか、品質上の問題がないかを判断するには、技術やシステムへの理解が必要です。
AIは5つの能力を横断して使う
スーパーソフトウエアでは、AI活用を6つ目の能力とは定義していません。
AIは5つの能力それぞれで利用できます。
- 作る:コード生成、テスト生成、実装支援
- 理解する:既存コード解析、仕様整理、技術調査
- 判断する:複数案の比較、論点整理、AI生成物の検証
- 進める:タスク分解、課題整理、検討材料の作成
- 共有する:ドキュメント作成、ナレッジ整理、標準化
AIを使う経験が増えるほど、「AIが使えるか」という一項目だけでは、実際の仕事で発揮する能力を説明しにくくなります。
AIを使って何を作るのか、何を理解するのか、何を判断するのか、どう開発を進め、知識をどうチームへ残すのか。
そこまで含めて考えるのが、スーパーソフトウエアにおける開発推進力です。

AIで生まれた余力を、次の能力へつなげる
生成AIによって一部の作業を速く進められるようになったとき、その余力をどこへ使うかによって、経験できる仕事も変わります。
例えば、実装にかかる時間が短くなれば、これまで触れられなかったクラウド、DB、テスト、自動化など、より広い技術領域まで見る時間を作れます。
自分の担当作業が早く終われば、その先にある依存タスクや課題まで確認し、一つの機能を前に進めるところまで担当範囲を広げることもできます。
AIを使ってドキュメントやナレッジの整理を効率化できれば、個人が得た知識をレビュー観点や手順、標準として残し、次の開発でチームが使える形へ変えることもできます。
レビュー、設計理由の説明、品質判断、仕様の背景理解など、日々の開発で経験したい具体的な仕事については、第一弾の記事で詳しく扱っています。
→ 生成AI時代のエンジニアの仕事・キャリア|1,265人調査から考える
第二弾では、その先に能力がどう広がっていくのかを見ていきます。
エンジニアの成長は「担える領域」と「課題の難度」の二方向に広がる
スーパーソフトウエアでは、エンジニアの成長を大きく二つの方向で考えています。
一つは、担える領域を広げること。
もう一つは、解ける課題の難度を高めることです。

担える領域を広げる
例えば、自分に割り当てられた一つの実装から始まり、
自分のタスク
→ 機能
→ チーム
→ プロジェクト
へと、前に進められる範囲を広げていく方向です。
担当する仕事も、
実装
→ 詳細設計
→ 基本設計
→ 顧客との仕様調整
のように広がっていきます。
ここでは、作る力に加えて、理解する力、判断する力、進める力、共有する力を使う場面が増えていきます。
解ける課題の難度を高める
もう一つは、
実装
→ 設計判断
→ 品質・性能上の問題
→ 複雑な既存システムの解析
→ 技術選定・AIを利用した開発改善
のように、技術者として扱える問題を深くしていく方向です。
同じ技術を使っていても、解決できる問題の複雑さが高まれば、開発の中で果たせる役割も変わります。
この二方向を、スーパーソフトウエアでは、
担える領域を広げ、解ける課題の難度を高める。
と表現しています。
そして、その変化を採用向けの言葉で表したのが、
技術力を、次の役割へ。
です。
技術力は二方向のどちらにも共通する土台です。
技術力を、次の役割へ。
今回の調査では、AIをほぼ毎日使うエンジニアほど、AIへの指示や最新技術に加え、「コードを書く力」もAI未利用者より高い割合で選んでいました。
AIが開発に入ることで、エンジニアが使う能力の範囲は広がっています。
技術を使って作る。
顧客やシステムを理解する。
AIの出力を含めて判断する。
周囲と開発を進める。
得た知識をチームへ共有する。
AIも使いながら、この5つの力を広げていく。
その積み重ねによって、担える領域が広がり、解ける課題の難度が高まっていく。
それが、スーパーソフトウエアが考えるAI時代の開発推進力です。
調査概要
- 調査名:生成AI時代のITエンジニアに関する調査
- 調査対象:現在ITエンジニアとして従事する27〜59歳の男女
- 調査期間:2026年8月17日〜2026年8月19日
- 調査方法:インターネット調査
- 調査ツール:Freeasy(運営:アイブリッジ株式会社)
- 回収数:1,320件
- 有効回答数:1,265件(回答品質の確認後)
※構成比・回答率は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
※複数回答設問では、回答率の合計が100%になりません。
※「今後重要性が高まる能力」は最大3つまで選ぶ複数回答であり、各能力の現在の重要性を評価したものではありません。
※本調査は回答時点のAI利用頻度と各回答との関連を示すものであり、因果関係を示すものではありません。
【ITエンジニア1,265人調査】AIを使い込む人ほど「コードだけでは不安」―毎日利用者85.6%、未利用者14.9%
この記事のテーマについて、もっと話を聞いてみたい方へ:
- 第一弾を読む — AIで変わる仕事と、経験しておきたい仕事(1,265人調査・第一弾)
- AIの出力の判断を考える — 現場マネージャーがAIの出力を判断する5つの観点
- 担当工程の広がりを考える — SESで上流工程に行けるか|契約を変えずに進む5ステップ
- スーパーソフトウエアでのキャリア — キャリアを知る|技術力を土台に、担える領域が広がる
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