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キャリア船木 俊介

30代エンジニアが「このまま技術だけでいいのか」と感じたときに読む記事

30代エンジニアが「このまま技術だけでいいのか」と感じたときに読む記事

技術には自信がある。でも、それだけでいいのか

エンジニアとして7年、8年と経験を積んできたどこかのタイミングで、ふと立ち止まる瞬間があります。

金曜の夜、最後のPRをマージしてIDEを閉じる前に。あるいは月曜朝、新しい案件のキックオフ資料を眺めながら。設計も実装もレビューもできる。明日の設計レビューでも、おそらく今日と同じ指摘をすることになる。技術的には一定の水準に達している自負はある。けれど、この先10年、同じことを続けていて大丈夫なのだろうか。

この不安は、能力が足りないから生まれるのではありません。むしろ能力がある人ほど感じる不安です。自分にできることが見えているからこそ、その延長線上にある未来に物足りなさを覚える。

不安の正体は「天井が見えた感覚」

30代前半の不安は「マネジメントか、スペシャリストか」というキャリア選択の問題として語られがちですが、その手前にもっと素朴な感覚があります。

それは 「同じことの繰り返しになっている」 という感覚です。

新しいプロジェクトに入っても、やることの本質は前のプロジェクトと大きく変わらない。言語やフレームワークが多少違っても、設計の考え方や進め方は同じ。20代の頃のような「毎日何かを吸収している」という手応えが薄れている。

成長が止まったわけではなく、一定の水準に達したからこそ 日々の仕事が「こなせてしまう」ようになった ということです。こなせる日々には、充足感がない。

同年代のエンジニアの中に、自分とは少し違う動き方をしている人がいる。顧客と直接話をしている。チームの方針を決めている。後輩の育成を任されている。自分と同じ技術力なのに、なぜか「任されている範囲」が違う。

「このまま技術だけでいいのか」という不安の正体は、突き詰めると 「技術以外の部分で差がつき始めている」ことへの気づき です。

「マネジメントか、スペシャリストか」は問いの立て方が違う

マネジメントに行けば、技術から離れてしまいそうで怖い。スペシャリストとして特定領域を極め続ける覚悟があるかと言われると、それも違う気がする。どちらかに振り切れないまま、中途半端な位置で立ち止まってしまう。

この二択が苦しいのは当然です。なぜなら、現場で本当に求められている人材は、この二択のどちらでもないからです。

プロジェクトの現場で求められているのは、技術がわかっていて、かつ「チームを動かす」「顧客と対話する」「設計の方針を決める」といった役割をこなせる人。つまり、技術力を土台にしながら、技術の外側にある仕事も引き受けられる人です。

これはPLやテックリードと呼ばれるポジションに近いものですが、肩書きの問題ではありません。要は 「任される範囲が技術だけに留まらない人」 のことです。

技術を捨てるのではなく、技術の「使い方」を広げる

たとえば、ECサイトのリプレイス案件で新APIのレビューに入ったとします。エンドポイントの命名やステータスコードの妥当性を指摘するのは、多くのSEがやっています。しかし「このAPI設計だと、運用部門が日次で叩く集計クエリが重くなる」「将来、決済代行や物流の外部連携を増やしたときにバージョニングで詰まる」と発言できるエンジニアは、同じレビューでも貢献の質がまったく異なります。

あるいは、後輩が書いた基幹系の在庫引き当て処理のコードをレビューする場面。「このトランザクション境界は、ここで切ったほうがいい」と技術的に伝えることは基本です。しかし「在庫を引き当てた瞬間、倉庫の現場では何が起きているのか。だからこのタイミングでロックを取る必要がある」と業務の文脈から説明できるエンジニアは、後輩の成長を加速させます。

技術力という土台の上に 「判断」「説明」「調整」 といった別の力を積み上げていく。これが、30代からの技術の使い方の広げ方です。

「任される」は自然には起きない

ただし、一つ厳しい現実があります。技術の使い方を広げるチャンスは、待っていても来ないということです。

多くの現場では、エンジニアは技術的な成果物で評価されます。設計書の品質、コードの品質、バグの少なさ。これらで高い評価を得ることはできますが、それだけでは「技術の外側」の仕事が回ってくることはありません。レビューで月20件の不具合を未然に防いだエンジニアが、評価面談で「安定した戦力」と書かれるだけで、客先の要件定義MTGに呼ばれているのは隣の席の同期だった――そういう非対称は、どの現場でも起きています。

チャンスを掴むには、自分から動く必要があります。PMやPLが困っていることに気づいたら「自分にできることはありますか」と声をかけてみる。顧客とのミーティングに同席する機会があれば、積極的に手を挙げてみる。チーム内で誰もやりたがらない調整ごとを、試しに引き受けてみる。

こうした小さな一歩を積み重ねた結果として、ある日「このタスク、あなたに任せてもいいですか」という言葉が来る。それが「任される」の始まりです。

環境が「任せてくれる」かどうかも大事

ここまで「自分から動く」という話をしてきましたが、能力や意欲があっても個人では突破しきれない問題もあります。環境の問題です。

所属する会社やプロジェクトの構造によっては、どれだけ手を挙げても「技術の外側」の仕事が回ってこない場合があります。商流の下のほうにいて顧客と接点がない。社内にPLやPMへのキャリアパスが存在しない。年功序列で、若手にはいつまでも実装だけが割り当てられる。

こうした環境にいるなら、今の場所で我慢し続けることが正解とは限りません。「自分が任される範囲を広げたい」と思ったとき、その意欲を受け止めて機会を与えてくれる環境があるかどうかは、キャリアを大きく左右します。

転職が唯一の解とは言いません。しかし、「このまま技術だけでいいのか」と感じているなら、その不安を「環境を見直すきっかけ」として活かすことは、決して悪い判断ではないはずです。

30代は「曲がり角」ではなく「キャリアの広がり始め」

「30代はキャリアの岐路」「分岐点」「曲がり角」――こうした言葉は、どうしても「今の道を捨てて別の道に行くべきだ」という印象を与えます。

しかし実際には、30代のキャリアはそんなに劇的な分岐ではありません。技術力という幹は変わらないまま、枝が少しずつ広がっていくというイメージのほうが現実に近い。

設計ができるようになった。その設計を人に説明できるようになった。顧客の業務に興味を持つようになった。後輩の面倒を見る余裕ができた。チーム全体の動きに気を配れるようになった。これらは全部、技術力という幹から自然に伸びた枝です。

30代は、この枝の伸ばし方を意識的に選べるようになる時期であり、幹を切って別の木に生まれ変わる時期ではありません。

「このまま技術だけでいいのか」という問いへの答えは、「技術だけ」をやめることではなく、技術を軸にしながら「技術だけではない」自分になっていくことです。その変化は、明日から少しずつ始められます。AI時代に何が変わって何が変わらないかを現場マネージャーの視点から整理したAI時代のエンジニアに変わらず求められる5つの力も、その「明日から」の指針として参考にしてください。

スーパーソフトウエアのエンジニアキャリア

スーパーソフトウエアでは、技術力のあるエンジニアが「技術の外側」に踏み出す機会を意識的に作っています。プレリーダー層は、主要顧客と直接対話しながらプロジェクトに協力し、自分のチームを広げていくポジションにアサインされていく。商流の途中で顧客と切り離されることなく、設計の方針を決め、メンバーを束ねる経験を、信頼が積み上がった段階で渡していきます。

幹を切らずに、枝を伸ばす。年次ではなく信頼によって任される範囲が広がっていく。そんなキャリアの広がり方を、一度のぞきにきませんか。


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